最適な選択科目は日本史?世界史?それとも…(3)
最適な選択科目は日本史?世界史?それとも…(3)
日本史は受験勉強開始の時点で受験生の間に大きな差がついていること、それに対して、世界史はほとんど差が無い状態でのスタートになる、という説明をしてきました。
「歴史好き」と「そうでない普通の生徒」との間のハンディに加えて、安易な日本史選択者が苦労するもう一つのポイントを挙げておきます。
前回までに説明した通り、日本史は小中学校の授業で一通りの勉強を終えています。旧石器時代~現代史まで、すべて私立中学入試や高校入試の範囲です。
小中学校で勉強するような日本史の内容を「通史」と言います。
卑弥呼や聖徳大使、源頼朝や徳川家康のような有名人物や、大化の改新や関ヶ原の合戦のような大きな事件、平安時代や江戸時代のような時代ごとの基本的な流れについて勉強します。こうした内容が高校入試までに扱われます。
では大学受験の日本史では何が出題範囲となるのか?
受験日本史は想像以上に専門的な内容が多い
通史については勉強済みなので、大学入試では簡単な通史はほとんど出ません。大学入試での出題の中心は、もっともっと細かい話です。
具体的に言うと「税金や行政の制度」「経済の仕組み」「宗教や文化」「有名ではない人物や事件」などです。
日本史は中学校までに基本的なところを勉強してしまっているために、大学入試では、とにかく難しく、渋く、地味で細かい専門的なことを大量に学ぶことになります。
ある意味、小中学校で習う日本史は「ドラマティック」で「面白い」部分です。わかりやすく興味も持ちやすい。
ドラマティックで面白い部分、有名な事件や人物については、小中学校で扱ってしまっているために、大学受験の日本史は「ひたすら細かい制度について勉強する」ことになります。
これがなかなか厳しいんです。
歴史ファンの子供たちは、まず、漫画日本の歴史や大河ドラマなどで、歴史の面白さを知ってから日本史の世界に入ってくる。だから、難易度の高い受験日本史にも、それなりの面白さを見出すことができる。
しかし、いままで学校の授業くらいでしか日本史と接する機会がなく、あくまで「学校のテストや入試のための日本史」しか勉強してこなかった人たちは、いきなり大量の「税金や行政の制度」「経済の仕組み」「宗教や文化」「有名ではない人物や事件」を詰め込まされて、かなりつらい思いをすることになります。
受験世界史は各国の基本的な通史がメイン
それに対して世界史は違います。
世界史は小中学校でほとんど習っていないため、大学受験の範囲でも「通史」がメインです。
しかも、中国やヨーロッパ、イスラム世界など各地域の「卑弥呼」「聖徳太子」「徳川家康」に当たるような有名人物や、関ヶ原の合戦のような有名な大事件を学びます。
それぞれの国に行けば、小中学校で習うようなレベルのことを、世界中まんべんなく学ぶわけです。
だから、学問的には世界史の方が圧倒的に難易度が低い。社会制度や経済の構造についてももちろん学びますが、日本史に比べればはるかにシンプルな内容です。
まとめ
ここまでの話をまとめます。
私は決して世界史の方が日本史より簡単だと言っているわけではありません。世界史だって大変です。
ですが、日本史は小中学校までの基礎があるかどうかがとても重要な鍵を握ります。
(念のためもう一度言いますが、中学校の定期テストで70~80点取れていた、というレベルではなく、蘇我馬子や持統天皇や楠正成や田沼意次について、いまこの瞬間スラスラ説明できちゃうレベルを「基礎」と言います)
日本史の基礎がある人はぜひそのハンディを生かして日本史で高得点を目指しましょう。
歴史ファンのきみから見れば「え、そんなことも知らないの?」という生徒たちが相手です。
数学で言えば、連立方程式からやり直さなければならない人たちを相手に、微分積分で1年後に勝負するような戦いです。
また、日本史のドラマティックな面白さを知っているきみにとっては、その背景にある制度や文化の成り立ちを学べることは、大いに知的好奇心を満たしてくれることでしょう。
歴史の楽しさをまだ知らない皆さんへ。
もしきみが日本史を選択すると、いきなり細かい事項を大量に詰め込まされて面食らってしまうでしょう。
それでも日本史を選択するなら(もしくは既に選択してしまったのなら)、他の歴史ファンの子たちと同じように、まずは歴史の面白い部分から勉強していきましょう。
いきなり教科書や参考書を使って勉強を始めるのは得策ではありません。具体的に言うと、まず漫画「日本の歴史」を全巻読む。
ここをすっ飛ばすのは、掛け算九九や連立方程式を学ばずに微分積分を学び始めるようなものです。
(ちなみにオススメはぶっちぎりで小学館・少年少女日本の歴史シリーズです。)
また、できれば毎週NHK大河ドラマ「青天を衝く」や歴史秘話ヒストリアを観る。
こういうい番組にまったく興味が持てないのであれば大学受験で日本史を選択することはお勧めしません。野球にまったく興味が無い子が甲子園を目指すようなものです。
急がば回れ
世界史選択なら、普通に参考書で勉強を始めても良いでしょう。
でも、やはりお勧めは漫画世界の歴史やテレビ、映画などを上手に活用することです。最初に基本的な流れを知り、人物や事件のイメージが印象に残ると、これから挑む大量の暗記も、はるかにやりやすくなります。
「急がば回れ」ですね。
なおかつ、最初に漫画などを通じて世界史が「好き」になれれば、受験勉強そのものが苦痛なものではなく楽しいものに変わるはずです。
「好きこそものの上手なれ」
「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」(論語)
とも言います。
勉強でもスポーツでも仕事でも、苦しみながら頑張るよりも、好きになること、楽しむことが勝利への近道なんですね。
きみの成功を祈ります。
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